子どもの発達や学習に関心を持つ保護者の皆さんにとって、WISC-Ⅳ(ウェクスラー式知能検査)は耳にしたことがある言葉かもしれません。WISC-Ⅳは、子どもの知能を測るための検査であり、その結果から子どもの特性や課題を把握することができます。このコラムでは、WISC-Ⅳの基本情報や特徴についてわかりやすく解説します。
WISC-Ⅳ(ウェクスラー式知能検査 第4版)とは
WISC-Ⅳ(Wechsler Intelligence Scale for Children- Fourth Edition)は、児童を対象とした知能検査の一つです。このテストは、言語能力、知識、思考能力、記憶力、空間認識能力など、さまざまな知的能力を評価するために使用されます。
対象年齢
WISC-Ⅳ(Wechsler Intelligence Scale for Children- Fourth Edition)の対象年齢は、5歳0か月から16歳11か月までです。この範囲の児童が対象となります。テストは、年齢に応じた課題や質問を含み、子供の知能や発達の評価を行います。年齢ごとに適切なテスト項目や難易度が用意されており、子供の成長段階に適した評価が可能となっています。
対象年齢 |
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5歳0か月から16歳11か月 |
実施時間
WISC-Ⅳの実施時間は通常60分から90分程度です。具体的な時間は受検者の年齢や個人の状況によって異なる場合があります。テストは複数の項目で構成されており、それぞれの項目に対して指示が出され、受検者が課題に取り組んでいきます。専門の評価者や臨床心理士が指導し、適切な進行をサポートします。受検者の負担を最小限に抑えるため、適度な休憩時間も設けられます。全体の実施時間は一般的には1時間半程度を目安にしています。
実施時間 |
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通常60分~90分 |
実施機関
WISC-Ⅳは公的機関や医療機関、民間のカウンセリングルームなどで実施されます。具体的な実施機関としては、教育支援センター、児童相談所、学校などの公的機関があります。また、児童精神科や小児科などの医療機関でも受けることができます。さらに、民間のカウンセリングルームや臨床心理士のオフィスなども実施機関となります。実施機関は地域や利用する制度によって異なる場合がありますので、受検を希望する場合には、まず最寄りの機関を探し、その受け付け可能性を確認することが重要です。
実施機関 |
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公的機関(教育支援センター、児童相談所、学校など) |
医療機関(児童精神科、小児科) |
民間のカウンセリングルームなど |
検査費用
WISC-Ⅳの検査費用は実施する機関によって異なります。公的機関や医療機関では、一部の場合は保険適用がされることもありますが、すべてのケースで保険適用されるわけではありません。民間のカウンセリングルームなどでは保険適用外の場合が一般的です。また、診断書や報告書を作成してもらう場合には、別途料金が発生することがあります。検査費用や報告書作成の料金は機関ごとに異なるため、事前に確認することが重要です。費用に関しては、受検を希望する機関に直接問い合わせるか、事前に詳細を調べることをおすすめします。
保険適用について
WISC-Ⅳの検査に関しては、一部の場合に保険適用がされることもあります。公的機関や医療機関などでの実施では、保険適用の可能性があります。ただし、すべてのケースで保険適用がされるわけではなく、機関や状況によって異なります。保険適用の可否については、受検を希望する機関に直接問い合わせるか、事前に保険会社や医療機関に確認することが重要です。保険適用の範囲や自己負担の有無などを把握して、受検に関する費用や支払い方法を確認しましょう。
WISC-Ⅳの特徴
WISC-Ⅳの特徴は次のようなことがあげられます。
全15の下位検査
WISC-Ⅳは10の基本検査と5つの補助検査で構成されています。これにより、子どもの知的発達の様相を多角的に把握することが可能です。
基本検査
基本検査は10種類の検査で構成されており、子供の異なる能力やスキルを評価します。例えば、言語理解の検査では言葉の理解や表現能力を評価し、知覚推理の検査では視覚情報の理解や表現能力を評価します。他にもワーキングメモリーや処理速度など、様々な能力が評価されます。
補助検査
補助検査は5つの検査で構成されています。これらは基本検査を補完し、より詳細な情報を得るために実施されます。例えば、言語理解の補助検査では、言葉の理解に加えて語の推理能力も評価されます。
5つの合成得点
10の基本検査から全検査IQと4つの指標得点が算出されます。全検査IQは知的発達水準を表し、指標得点は言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度といった特定の能力を示します。
全検査IQ
全検査IQは、知的発達の水準を表す指標です。IQ100は同年齢の子どもたちの平均とされており、この平均と比べてどの程度の知的発達を示すかが評価されます。ただし、4つの指標得点に大きな差がある場合は、参考値として扱われ、解釈には慎重さが求められます。具体的な所見や検査者からのフィードバックを確認することで、より具体的な情報が得られます。
指標得点
言語理解 |
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言葉を用いて、物事の概念を理解し、表現する力 |
知能推理 |
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視覚情報を正確に捉え、理解し、表現する力 |
ワーキングメモリ |
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聴覚情報を短時間記憶し、操作する力 |
処理速度 |
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視覚情報を正確に捉え、素早く処理する力 |
下位検査
それぞれの下位検査では、特定の能力を評価します。例えば、言語理解では類似や単語の理解などが含まれます。補助検査もあり、言語理解では理解や語の推理が評価されます。
言語理解 |
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類似、単語、知識(補助検査:理解) |
知能推理 |
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積木模様、行列推理、パズル(補助検査:バランス(16~69歳のみ)、絵の完成) |
ワーキングメモリー |
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数唱、算数、(補助検査:語音整列(16~69歳のみ)) |
処理速度 |
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記号探し、符号(補助検査:絵の抹消(16~69歳のみ)) |
詳しくはこちらを参考にどうぞ
WISC-Ⅳの分析と活用 新潟大学教育学部長澤正樹
ウェクスラー式知能検査の注意点
ウェクスラー式知能検査を受ける際には、以下の注意点があります。
- 検査内容の詳細は公開されていないため、受検者が事前に知ることはできません。一般の方が検査を購入して自己実施することはできません。
- 検査は専門家によって行われる必要があります。心理アセスメントに関する知識と経験を持つ専門家が検査を行います。資格や経験のある臨床心理士や特別支援教育士などが該当します。
- 同じ検査を受ける場合には、最低でも1年以上の間隔を空けることが望まれます。短期間での受検は、回答を覚えてしまう可能性があり、正確な結果が得られなくなる恐れがあります。
- ウェクスラー式知能検査では測れない事柄もあります。創造性や感情コントロールなどは測定されないため、知能検査の結果だけで全てを判断することはできません。
- 発達性読み書き障害においても、ウェクスラー式知能検査は読み書きの苦手な程度を測定することはできません。他の検査やアセスメント方法が必要とされます。
以上の点に留意しながら、知能検査の結果を受け取る際には、検査者や専門家に相談し、結果の解釈や対応について確認することが重要です。
まとめ
WISC-Ⅳは、子どもの知的発達を評価するための有用なツールです。検査の結果を通じて、子どもの得意な分野や苦手な分野、特性や課題を把握することができます。この情報は、学校や家庭での支援のために重要な手がかりとなります。しかし、検査結果は単独で判断するものではなく、専門家の解釈やフィードバックを受けることが重要です。保護者の方々は、検査結果を通じて子どもの個々の特性を理解し、適切なサポートを提供するために、専門家との協力を活用していきましょう。
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