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ダウン症のある人の平均寿命と成人期の健康課題:寿命延長の背後にある理由とは?

author:dekkun
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ダウン症のある人々の生涯が、医学の進歩と共に大きな変革を遂げています。かつてはその平均寿命が短いとされていましたが、最近の統計ではその数値は着実に増えてきています。本記事では、ダウン症のある人々の平均寿命や平均余命、そして最高齢の事例について探ってみましょう。さらに、成人期の医療における課題や寿命延長の背後にある理由についても解説します。

ダウン症の平均寿命が延びてきた背景

ダウン症の方々の中には、以前は乳幼児期に心臓の問題が原因で10歳に満たないことも珍しくありませんでした。しかし、最新の医療技術の進歩により、子どもたちの寿命は飛躍的に伸びてきました。かつてのように10歳以上生きることも珍しくはなくなってきたのです。

日本の2021年の簡易生命表によれば、日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳です。それに対し、ダウン症の方々の平均寿命は60歳前後とされています。一般的な平均寿命と比べると短く感じられますが、実際には多くの方々が40歳以上で生きており、以前に比べてかなり長寿な方々も増えています。

ダウン症とは

ダウン症は、1866年に初めてLangdon H. Downによって報告された疾患です。正式には「ダウン症候群」と呼ばれ、ヒトの染色体異常に起因する最も一般的な疾患です。ヒトの染色体は通常46本で構成されていますが、ダウン症の場合、21番目の染色体が1本多い「21トリソミー型」がほとんどです。この染色体異常が原因で発症します。ダウン症は大まかに3つのタイプに分類されます。

「標準型21トリソミー型」(約95%)

通常の染色体の数に加えて21番目の染色体が1本多く存在し、合計47本の染色体となる型です。これは受精時に偶然発生するもので、両親の染色体には影響しません。

「モザイク型」(1~3%以下)

2つの異なる種類の細胞から成る体を持ちます。21番目の染色体が3本存在する細胞と、通常の染色体数の細胞が混在する状態です。モザイク型は両親の染色体に関係なく発生します。

「転座型」(約4~5%)

21番目の染色体の1本が他の染色体に付着して発生します。これによって染色体の数は通常の46本となります。転座型のうち約半数が遺伝的な要因によって起こり、両親の染色体に変異がある場合に発生します。

ダウン症の染色体異常そのものを直接治療する方法はまだ存在しませんが、合併症に対する治療法はあります。ダウン症に伴う先天的な問題や後天的な疾患への治療が進んでおり、その分野で医学の進歩が続いています。

ダウン症の寿命延長の理由

現時点ではダウン症自体の治療法はありませんが、医学の進歩により、合併症の治療は可能となってきています。特に、乳幼児期から行われる先天性心疾患や消化器疾患の手術などが、寿命の延長に大きく寄与しています。また、早期の療育と健康管理も、健康状態の向上につながっています。

ダウン症の主な死因

ダウン症の方々の死因は年齢によって異なります。乳幼児期から18歳までは先天性心疾患や白血病などが主な死因とされます。成人期には誤嚥性肺炎や呼吸器感染が多くなりますが、老年期にはダウン症のない方々との差は縮まっています。

2020年代の日本において、ダウン症の方々の平均余命は60歳前後とされていますが、これは平均寿命より短いです。しかし、今後も医療の進歩と適切なケアにより、さらに寿命が延びていくことが期待されています。

医療の進歩により、ダウン症のある人の寿命が変わりつつある

以前は、ダウン症のある人の寿命が短いとされていました。1975年に発行された書籍には、「ダウン症候群の赤ちゃんのうち約20~40%は生後数ヶ月、ないし数年以上生き延びることは難しい」という記述がありました。しかし、実際にはダウン症そのものが原因ではなく、当時の医療水準では合併症による影響が大きく、心疾患や感染症などによって幼少期に命を落とすことが多かったため、寿命が短いと考えられていたのです。

ダウン症の合併症治療の進歩

最近では医学の進歩により、合併症の早期発見と治療が進化し、ダウン症のある人の寿命が延びています。特に、心臓疾患はダウン症の赤ちゃんの半数以上に影響すると言われていますが、胎児期から乳幼児期にかけてのスクリーニングや早期の外科手術が可能になり、治療成績も向上しています。

心臓病の専門施設の増加や手術技術の向上により、合併症の治療における成功率が高まり、心臓の状態を早い段階で改善することができるようになりました。これによって、ダウン症の人々の寿命が延び、健康な生活を送ることができる可能性が高まっています。

ダウン症のある人は、さまざまな合併症のリスクがあるかもしれませんが、健康管理や適切な治療、発達支援、社会的なサポートを受けることで、充実した人生を送ることができるでしょう。医療の進歩と連携しながら、ダウン症のある人の未来を支えていきましょう。

ダウン症のある人の、合併症の疾患別健康管理のアプローチとは?

ダウン症のある人の健康を維持するためには、合併症に対する適切なアプローチが必要です。特に、以下の疾患ごとに専門的なケアとフォローアップが重要です。

合併症管理とフォローのポイント

心臓の疾患
心臓に関する問題がある場合、早期の診断と主治医の指導が大切です。必要に応じて治療や経過観察を行いましょう。
消化器の問題
肛門や消化器官の異常に注意し、適切なケアや排便コントロールを行うことが重要です。
血管や甲状腺の異常
血液や甲状腺に関する異常を早期に発見するために、定期的な血液検査がおすすめです。
視力や目の健康
視力や眼の健康 眼の問題を予防するために、定期的な眼科受診とスクリーニング検査が必要です。
聴力や耳鼻科の問題
聴力のトラブルや耳鼻科の異常に気づくために、新生児期からの定期的なフォローアップが必要です。
歯のケア
歯の健康を守るために、歯科受診と適切な食事指導が重要です。
泌尿器の健康
男児は精巣の停留に注意し、尿の問題についても主治医に相談してください。
足の問題
足の問題 足のトラブルがある場合、適切な専門家のアドバイスを受けることが大切です。
頸椎のチェック
頚椎の問題を確認するために、定期的な検査とフォローアップがおすすめです。

これらの合併症へのケアと定期的なフォローアップは、ダウン症のある人の健康を維持するために欠かせません。主治医と連携して、最適なケアプランを進めていきましょう。

参考文献

  1. 厚生労働省 「主な年齢の平均余命」
  2. 厚生労働省 「主な年齢の平均余命の年次推移」
  3. 山根希代子 「ダウン症の長期追跡と療育支援」

ダウン症の最高齢と日本における平均寿命

ダウン症の方々の寿命が伸びつつある背景には、どれくらいの高齢者がいるのか気になるところです。現在のダウン症の最高齢はどれくらいなのでしょうか。実は、オーストラリアでは73歳、スウェーデンでは87歳、アメリカでは70歳という記録があります。そして、日本は長寿国として知られていますが、ダウン症の方々でも102歳という高齢者が記録されています。

1995年から2016年までの20年間にわたる日本の調査結果によれば、ダウン症の方々の平均寿命は大幅に伸びており、2010年以降では3人に1人が60歳以上になる結果が出ています。このトレンドが続けば、ますます寿命が延びることが期待されます。

参考資料

ダウン症児の寿命は、男女で違いがあるの?

現在のダウン症の方々の平均寿命は、男女ともに60歳前後と言われています。日本人の平均寿命が男性で81.47歳、女性で87.57歳であることを考えると、ダウン症の方々でも女性の方がわずかに長寿と言えるかもしれませんが、その差は大きくありません。男女ともに平均85歳前後となります。

ただし、ダウン症の方々の寿命に影響を与える要因として、合併症や症状の重さがあります。先天性の心疾患などが早くから発症すると、寿命が縮まる可能性が高まります。逆に、10歳までに大きな問題がなければ、寿命は大幅に延びることがあります。

ダウン症の方々の平均寿命は現代でも男女とも50歳代を超えることが分かっていますが、誤嚥性肺炎や呼吸器感染などによる合併症や、症状の重さにより、若干数の方々が10歳前に亡くなることもあるのが実情です。ダウン症の平均寿命に影響を与える要因は、男女差よりもむしろ症状の程度や合併症の有無が大きいのです。

参考資料

ダウン症の寿命は治療で延ばせる?

ダウン症の合併症と治療

ダウン症の方々の寿命が短い理由は、合併症が発生しやすいからだと言われています。特に、先天性の心臓疾患が最も多いです。かつてはこの心臓疾患により、ほとんどのダウン症児が10歳未満で亡くなっていました。しかし、現在では小さな子どもの心臓手術の成功率が向上し、生存率が増加しています。これによって、10歳を超えることができるチャンスが広がりました。

また、食道閉鎖症、十二指腸閉鎖症、巨大結腸症などの命にかかわる消化器疾患がダウン症児によく見られますが、医療の進歩によりこれらの合併症も根治可能になってきています。その結果、多くの方が10歳以上を迎えることができ、平均寿命の延長に繋がっています。

さらに、筋肉の低下や筋肉の発達の難しさも寿命の短縮に影響する可能性があります。これはダウン症の二次的な問題であることが多いですが、生活習慣の見直しや運動不足の改善などを通じて、寿命を延ばすことができるかもしれません。

ダウン症の成人期の医療への課題

ダウン症の方々の平均寿命の延長は素晴らしいことですが、同時に新たな課題も浮かび上がってきました。長寿化に伴い、青年期や成人期においても治療が必要な場面が増えています。しかしこの時期の医療体制は整備されておらず、課題となっています。

子どもの頃は合併症の治療のために通院し、かかりつけの医師に定期的に診てもらっていた人々も、成長するにつれて治療が不要となり、かかりつけの医師を受診しなくなるケースがあります。しかし、成人後に発症する可能性もあるため、かかりつけの医師を持ち、定期的な検査や症状の早期治療を心がけることが重要です。しかし、ダウン症の方々を長期間サポートする体制はまだ整っていないため、どの診療科を受診すべきかわからないという問題も存在しています。

さらに、成人期のダウン症の方々にはアルツハイマー型認知症が発症することがあることが判明しています。全員が発症するわけではありませんが、40代前半から症状が現れることもあります。この症状の原因はまだ解明されていませんが、異常たんぱく質が脳に蓄積し、アルツハイマー型認知症を引き起こす可能性が考えられています。

参考資料

医療の進化とともに拡がるダウン症の寿命。成人期を健やかに過ごすために大切な医療へのアプローチ

医学の進歩によって、ダウン症の方々の寿命が著しく延びていることは素晴らしいことです。成長後も合併症やアルツハイマー型認知症のリスクがあることが報告されていますが、医療との緊密な関係を保つことで、必要な治療を適切なタイミングで受けることができます。子ども時代の治療が終わり、医療機関との関わりが減少することがあるかもしれませんが、成人期以降も定期的な健康診断や不調時の早期受診など、医療との絆を大切にしましょう。

ダウン症の方々は、体の不調をはっきりと伝えるのが難しいことがあります。大切な症状を見逃さないためにも、定期的な健康診断を受けることが安心の一歩となります。

ダウン症のある人の、年齢に応じた健康管理のアプローチは?

ダウン症を抱える人々は様々な合併症の可能性があるものの、確定的に100%発症する特定の疾患は存在せず、そのため一概には言えません。個々の健康状態に合わせた適切なアプローチが重要です。健康管理においては、合併症の早期発見や治療だけでなく、リスクの高い疾患を予防することも考慮されます。

乳児期・幼児期の健康管理

生後から1歳までは先天的な合併症の発見と成長の観察が重要です。新生児期から1歳までは月に1度、1歳から3歳までは3ヶ月ごと、3歳から6歳までは半年ごとに受診することが一般的です。発達や日常生活の進捗を確認します。

学童期の健康管理

学童期では健康状態を維持し、合併症を予防することが焦点です。就学後は年に1回の受診がおすすめされます。栄養状態や食生活にも注意を払います。

思春期の健康管理

思春期はホルモンバランスの変化により、心身が不安定になることがある時期です。年に1回の受診に加え、体調や精神的な変化について気になることがあれば医師に相談しましょう。

成人期の健康管理

成人期では健康的な生活習慣の指導と、成人に特有の合併症の予防と早期対応が重要です。年に1回の受診を行い、リスク要因を管理しましょう。

ダウン症のある人の、成人期の生活で大切なポイント

成人期のサポートと健康管理

寿命の延長に伴い、成人期を迎えるダウン症のある人たちの健康と生活について考える必要が出てきました。ダウン症の人々の成長と生活をトータルでサポートすることが重要だとされています。

異なるライフスタイルと支援

学校を卒業し成人すると、ダウン症の人々は地域の作業所や企業での勤務や、様々な日中活動を楽しむ施設で過ごすことがあります。ダンスや音楽、スポーツ、書道、絵画などで才能を発揮する人もいます。生活の基盤は家庭だけでなく、グループホームなどで独立して暮らす人もいます。

健康管理の課題

成人期では「肥満」など生活習慣に関わる課題にも注意が必要ですが、まだ大人のダウン症患者について詳しく知識を持つ医師は少ないようです。支援体制が整ってきているものの、健康管理においてはまだ課題が残っているようです。

ダウン症のある30代以降の人に影響を及ぼす、認知機能の低下とは?

成人期の新たな課題

平均寿命の延びに伴い、30代以降のダウン症の人々が元気に地域で暮らすケースが増えています。ただし、近年注目されているのは、30代以降において認知機能が低下し、日常生活や運動能力が減退するケースです。この状態はアルツハイマー病と類似しているとされています。

アミロイド前駆体タンパク遺伝子の影響

ダウン症の人々は「アミロイド前駆体タンパク遺伝子」が通常よりも多く存在するため、アミロイドタンパクが増加して脳内でアルツハイマー病に似た変化を引き起こす可能性が指摘されています。

認知機能低下の未解決の課題

現在、ダウン症の成人の認知機能低下を改善する効果的な治療法はなく、具体的な解決策はまだ見つかっていません。また、認知機能の低下がどのように進行するかに関する研究は進行中であり、解明されていない部分も多い状況です。

将来の臨床試験や研究によって、ダウン症の成人期に関する理解が進むことを期待し、すべてのダウン症の方々が安心して成人期を迎える日が訪れることを願っています。

まとめ

ダウン症のある人々の平均寿命が延びる中、成人期の医療や健康管理に関する課題は今後も重要なテーマとなるでしょう。医学の進歩や社会のサポートを受けて、彼らが充実した生活を送り、最大限の可能性を追求できるよう努力していくことが必要です。この進化の一環として、ダウン症のある人々がより良い未来を迎えるための支援が続いていくことを願ってやみません。

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