「特別支援学級とは何か?」これは、教育における大切な問いです。特別支援学級は、障害を持つ児童生徒のための特別な教育環境を提供する場ですが、その実態は多岐にわたります。このコラムでは、特別支援学級の基本概念から、障害種別に応じたクラスの編成、さらにはそれぞれのニーズに合わせた教育課程の編成に至るまでを詳しく解説します。障害を持つ児童生徒一人ひとりが、それぞれの可能性を最大限に発揮できるような教育の提供を目指して、特別支援学級の世界へと皆さんをご案内します。
特別支援学級について
特別支援学級の目的と構成
特別支援学級は、障害を持つ児童生徒のための小・中学校に設置された特別なクラスです。これらのクラスでは、個々のニーズに応じた少人数での指導を行い、学習や日常生活の困難をサポートします。通常のクラスと同様の機能を持ちつつ、特別な教育が提供されます。
特別支援学級の編成
特別支援学級は障害の種類に基づいて編成され、異なる学年の児童生徒が同じクラスに所属することがあります。「交流及び共同学習」を通じて、特別支援学級の生徒は通常のクラスの生徒と一緒に学ぶことが推奨されています。
対象となる障害の種類
特別支援学級の対象となる障害者は以下の8種類です:
- 弱視者
- 難聴者
- 知的障害者
- 肢体不自由者
- 病弱・身体虚弱者
- 言語障害者
- 情緒障害者
- 自閉症者
対象者の選定基準
特別支援学級の対象者は、障害の状態、必要な支援内容、地域の教育体制、その他の事情を勘案して選ばれます。例えば、知的障害特別支援学級では、抽象的な概念の理解が困難で、日常生活での一部援助が必要な状態の者が対象となります。
総合的な判断
児童生徒が特別支援学級に在籍するかどうかは、障害の有無だけではなく、その人の状況や学校・地域の体制を総合的に考慮して判断されます。
特別支援学級のための教育課程
小学校と中学校では通常、国の学習指導要領に基づいて教育課程を組んでいます。しかし、特別支援学級では、これらの学習指導要領を基本としながら、生徒のニーズに合わせた「特別の教育課程」を作成することが認められています。この特別な教育課程は、以下のように編成されます。
自立活動の導入
特別支援学級では、障害による学習や生活上の困難を克服し、自立を目指すために特別支援学校の学習指導要領に基づく自立活動が取り入れられます。
教科の目標と内容の調整
生徒の障害の程度や学級の実態に応じて、教科の目標や内容を調整することが可能です。これには、下学年の教科の目標や内容を取り入れることも含まれます。
教科の代替
さらに、特別支援学校で行われる知的障害者向けの教育を基にした教科での代替も行うことができます。
つまり、特別支援学級の教育課程は、生徒の個別のニーズに合わせて柔軟に編成され、彼らの学習と自立を支援するように設計されています。
特別支援学級の教育課程の編成について
学級全体の教育課程
特別支援学級の教育課程は、まず学級全体のために編成されます。これは、児童生徒一人ひとりに個別に作成されるものではありません。学級としての一般的な枠組みを作ることが最初のステップです。
個別の指導計画の作成
特別支援学級では異なる学年の児童生徒が混在しているため、実際の授業では、各生徒の個別のニーズに応じた指導計画を作成して実施します。このアプローチにより、生徒一人ひとりの学習の進行度や特性に合わせた教育が可能になります。
具体例の参照
さらに、具体的な教育課程の編成方法については、特定の特別支援学級の例を参照することが推奨されます。例えば、「知的障害特別支援学級」や「自閉症・情緒障害特別支援学級」の教育課程が参考になります。これらの具体例を通じて、教育課程編成の理解を深めることができます。
特別支援学級での学び
学級での学習計画
特別支援学級では、最初にクラス全体のための学習計画が作られます。この計画は、お子さん一人ひとりに合わせたものではなく、クラス全体での学習の方向性を決めるためのものです。
個別のサポート
お子さん一人ひとりが違う年齢で、みんなのニーズも違うので、実際の授業では、それぞれのお子さんに合わせた学習プランを作ります。このようにして、お子さん個々のペースに合わせた学びが可能になります。
他の例から学ぶ
特別支援学級でどのように教育課程が組まれているかをもっと知りたい場合は、「知的障害特別支援学級」や「自閉症・情緒障害特別支援学級」の具体例を見ると良いでしょう。これらの実例を通じて、どのようにお子さんに合った学習が行われているかがわかります。
特別支援学級の対象生徒と障害の種類
特別支援学級は、障害を持つ児童生徒を対象とした少人数のクラスで、小学校と中学校に設置されています。対象となる障害は8種類ありますが、自閉症・情緒障害特別支援学級では、自閉症者と情緒障害者の2種類の障害を持つ児童生徒を対象としています。これにより、7種類の障害別に特別支援学級が設置されています。
弱視特別支援学級について
対象者の障害の程度
弱視特別支援学級の児童生徒は、通常の文字や図形を拡大鏡などを使ってもうまく見ることが難しい程度の視覚障害を持っています。この障害は、特別支援学校の視覚障害学級に在籍している児童生徒のものよりも軽度です。視力、視野、光覚、色覚などの視機能が単独または複合的に低下しており、拡大しても文字を認識するのが難しいため、通常の学級での学習や生活に支障があります。
学級での主な指導方法
弱視特別支援学級では、読み書きの学習に負担の少ない環境を提供します。これには、教科書やプリントを拡大したり、パソコンの音声読み上げソフトを活用したりすることが含まれます。これらの方法は、生徒の視覚を最大限活用しつつ、学習負担を軽減することを目的としています。また、自立活動の指導では、「心理的安定」、「環境の把握」、「身体の動き」、「コミュニケーション」などの要素が重要です。これらの指導は、生徒の日常生活の質を高め、より自立した生活を送るために役立ちます。
難聴特別支援学級について
対象者の障害の程度
難聴特別支援学級は、補聴器を使用しても通常の話声を理解するのが難しい程度の児童生徒を対象としています。聴力検査などによって聴覚の程度を把握し、軽度の聴覚障害(20~40デシベル)の場合、静かな環境で約4~5メートル離れた場所からの話し声をかろうじて聞き取ることができます。しかし、騒がしい環境では聞き取りにくく、聞き返すことが多くなるなど、日常生活に困難が伴います。
学級での主な指導方法
難聴特別支援学級では、自立活動の指導が重要です。これには、生徒が持っている聴覚を最大限に活用することや、相手の口元を見て情報を得る読話の技術の使用などが含まれます。指導は、「環境の把握」や「コミュニケーション」の能力向上を目指し、各児童生徒の個々の状況に応じて行われます。これにより、難聴を持つ児童生徒がより自立した生活を送れるよう支援されます。
知的障害特別支援学級について
対象者の障害の程度
知的障害特別支援学級の児童生徒は、知的発達が遅れており、他人との意思疎通に軽度の困難があるため、日常生活を送る上で一部の援助が必要です。また、社会生活に適応することが困難です。知的発達の程度を把握するためには、個別の知能検査や適応機能検査が必要で、同年齢の児童生徒と比較して抽象的な概念の理解や複雑なコミュニケーションが難しいため、学習面や生活面での支援が必要です。
学級での主な指導方法
知的障害特別支援学級では、特別支援学校の学習指導要領を参考に、各教科を合わせた「生活単元学習」や「日常生活の指導」などの方法を取り入れます。これらの指導は、教科と生活の領域を統合し、児童生徒の日常生活のスキルや学習能力の向上を目指します。
肢体不自由特別支援学級について
対象者の障害の程度
肢体不自由特別支援学級は、補装具を使用しても、歩行や筆記など日常生活の基本的な動作に軽度の困難がある児童生徒を対象としています。この「軽度の困難」とは、筆記や歩行などの動作が可能であっても、速度や正確さ、持続性が同年齢の児童生徒と比べて低いレベルである状態を指します。
学級での主な指導方法
肢体不自由特別支援学級では、身体の動きや環境の把握、健康の保持、コミュニケーション能力などに焦点を当てた自立活動を通じて、個々の児童生徒の状況に応じた指導が行われます。また、この自立活動に関する指導は、学校生活全般や各教科の指導と密接に関連しており、全体的な指導効果を考慮した個別の指導計画の作成が重要です。
病弱・身体虚弱特別支援学級について
対象者の障害の程度
病弱・身体虚弱特別支援学級の対象となる児童生徒は、持続的または間欠的に医療や生活管理が必要な慢性の呼吸器疾患やその他の疾患、または持続的に生活の管理が必要な身体虚弱の状態にある者です。病弱教育の対象となる疾患には、気管支喘息、腎臓病、白血病、心臓病、糖尿病などがあり、最近ではアレルギー疾患や心身症、適応障害などが増加しています。
学級の形態
この特別支援学級には二つの形態があります。一つは、病院内に設置された特別支援学級(院内学級)で、入院中の児童生徒が利用します。もう一つは、入院の必要はないが小中学校内に設置された特別支援学級です。どちらの形態も、児童生徒には医療やその他の管理、連携が必要です。
学級での主な指導方法
病弱・身体虚弱特別支援学級では、自立活動の指導に重点を置きます。具体的には、自身の病気や体調の自己管理、病気や状態に関する正しい理解、学校生活での活動への具体的な指導、行動面や情緒面の安定を目指します。自立活動では、「健康の保持」、「心理的な安定」、「身体の動き」などが重要な要素となります。
言語障害特別支援学級について
対象者の障害の程度
言語障害特別支援学級の対象となる児童生徒は、口蓋裂や構音器官のまひなど器質的または機能的な構音障害、吃音など話し言葉のリズム障害、話すことや聞くことなど言語機能の基本的な発達遅れが著しい者です。これらの障害は、知的障害に起因するものではなく、器官の構造や機能の異常によって引き起こされるものです。構音障害では、口唇や舌などの器官の異常が原因であり、吃音では、流暢に話すことが困難な状態を指します。
学級での主な指導方法
言語障害特別支援学級では、言語機能の基本的な指導を自立活動の一環として行います。特に国語科での指導では、言葉の意味や概念の理解を確認しながら、体験的な活動を取り入れるなど、各教科の中でも丁寧な指導が必要です。自立活動の指導では、「心理的な安定」、「環境の把握」、「コミュニケーション」などの要素が重要となります。これらの指導は、児童生徒が日常生活でのコミュニケーション能力を向上させることを目的としています。
自閉症・情緒障害特別支援学級について
対象者の障害の程度
自閉症・情緒障害特別支援学級の対象となる児童生徒は、一つには自閉症や類似の状態で、他人との意思疎通や対人関係の形成が困難な者、もう一つには心理的な要因により選択性かん黙や神経症習癖、長期的な不登校などがある者です。これらは、医療的には自閉スペクトラム症(ASD)として広く捉えられており、知的障害を伴わないASDから、知的障害を伴うASDまでを含みます。また、情緒障害の状態は、心理的な問題を背景に、心身の状態を自分の意思でコントロールできない継続的な状態を指します。
学級での主な指導方法
自閉症・情緒障害特別支援学級では、自閉症の程度や知的障害を伴う自閉症者、さらには情緒障害を有する児童生徒が混在しているため、担任教師は児童生徒の個々の実態に基づいた丁寧な把握と、必要に応じてグループ化しての自立活動指導など、高い専門性が求められます。自立活動の指導においては、「心理的な安定」、「人間関係の形成」、「環境の把握」、「コミュニケーション」などが重要な要素となります。また、特定の自治体では、自閉症・情緒障害特別支援学級の対象を「知的障害のない自閉症等の児童・生徒」と明示していることもあり、担任教師は自治体の方針を理解する必要があります。
特別支援学級の教育課程編成の考え方
特別支援学級の教育課程の編成に関しては、文部科学省の「小学校学習指導要領(平成29年告示)総則」に基づいています。ここでは、特別支援学級において実施する教育課程には次の二つの重要な要素が含まれることが示されています。
自立活動の取り入れ
特別支援学校の小学部・中学部の学習指導要領にある自立活動を取り入れ、児童生徒が障害による学習上または生活上の困難を克服し、自立を目指すこと。
実態に応じた教育課程の編成
児童の障害の程度や学級の実態に応じて、各教科の目標や内容を調整すること。例えば、下学年の教科の目標や内容に替えたり、知的障害者に対する教育を行う特別支援学校の各教科に替えたりすることなどが含まれます。
つまり、特別支援学級の教育課程は、小中学校の標準的な学習指導要領に加えて、特別支援学校の学習指導要領を参考にしつつ、自立活動を取り入れたり、実態に応じた教育課程の編成を行うことが求められます。特別支援学級の担任教師は、これらの指導要領を理解し、適用することが重要です。
特別支援学校の教育課程の編成について
特別支援学校の教育課程の編成に関しては、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、病弱・身体虚弱者を対象としており、これらの障害を持つ児童生徒は、一般の特別支援学級よりも障害の程度が重いことが多いです。教育課程の編成には、以下の特徴があります。
総授業時数
総授業時数は、原則として小中学校の各学年と同じです。
知的障害がない場合
知的障害のない児童生徒を対象にした特別支援学校では、教育目標や内容は小中学校に準じており、自立活動を含む教育課程が編成されます。各教科の目標や内容は障害特性を踏まえたものとなりますが、基本的な構成は小中学校の学習指導要領に沿っています。
知的障害特別支援学校
知的障害特別支援学校では、知的障害の特性を踏まえた独自の教育目標と内容が設定され、教科別の指導、各教科等を合わせた指導、領域別の指導といった形態で教育課程が編成されます。また、教科は小学部6教科、中学部8教科となり、小中学校とは目標も内容も異なります。
教科書の使用
使用される教科書は「☆本」(ホシボン)と呼ばれる特別支援学校用の文部科学省著作教科書で、小学部は☆1つ~☆3つ、中学部は☆4つ~☆5つのレベルに分かれています。☆本は国語、算数・数学、音楽の3教科に使用されます。
これらの点を理解することが、特別支援学校の教育課程編成を正しく理解する上で重要です。
特別支援学級の教育課程の編成について
特別支援学級での教育課程の編成は、知的障害の有無によって異なるアプローチが取られます。
知的障害のない単一障害の特別支援学級
- ここでは、小中学校の該当学年の教育目標と内容に準じつつ、自立活動を取り入れます。
- 自立活動は特別支援学級での重要な指導の一部であり、小集団指導や個別指導などが行われます。
- 他の教科指導では、自立活動の内容を考慮して指導を行います。
- また、通常の学級との交流及び共同学習では、在籍児童の学年や実態を考慮し、通常の学級担任と協力して交流する教科や領域を選びます。
知的障害特別支援学級
- 知的障害のある児童生徒が在籍するため、特別支援学校の教育課程を参考に教育課程を編成します。
- 各教科の指導では、下学年の目標と内容を取り入れたり、生活単元学習などを組み合わせた教育を行います。
これらの点を理解することが、特別支援学級での教育課程編成を正しく把握する上で重要です。
特別支援学級における自立活動の実施について
特別支援学級における教育課程編成には、知的障害の有無に関わらず、自立活動の実施が重要な要素となります。自立活動の指導は、以下の三つの観点から行うことが文部科学省によって示されています。
全体の教育活動を通じての指導
自立活動は、学校生活全体にわたって適切に行われるべきものです。これは、道徳の指導のように、学校生活の中で機会を見つけて実施されるものと理解するとよいでしょう。
自立活動専用の時間における指導
自立活動は、学校生活全体にわたって行われるだけでなく、特別に設定された時間においても行われます。この際、各教科等の目標や内容と密接に関連して指導が行われる必要があります。
個々の児童生徒の障害の程度や発達段階の把握
個々の児童生徒の障害の程度や発達段階を正確に把握し、適切な指導計画を立てることが重要です。自立活動は、障害による困難を克服するための個別の指導計画に基づいて行われます。
これらの指導原則は、特別支援学級を担当する教師にとって重要であり、指導を行う際には自立活動の6区分27項目の内容から選び、具体的な指導目標と内容を考えることが勧められます。詳細については、「自立活動」や「自立活動の具体的な指導例」のセクションで確認できます。
まとめ
特別支援学級に関する私たちの旅はここで一区切りとなりますが、教育の旅はこれからも続きます。障害の種類に応じた教育の重要性、そしてそれぞれの児童生徒に合わせた教育課程の編成がいかに大切かを理解することは、教育者にとっても保護者にとっても重要です。このコラムが、特別支援学級についての理解を深め、個々の児童生徒の教育への関心を高める一助となれば幸いです。教育は、すべての児童生徒がそれぞれの才能を花開かせるための、永遠の旅路です。
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