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食べられないもの、食べたい衝動:異食症の謎と対策

author:dekkun
食べられないもの、食べたい衝動:異食症の謎と対策と記載されたイラスト

食事とは、私たちが栄養を摂取し、健康を維持するための重要な活動です。しかし、中には通常の食事ではないものを食べたいという強い衝動を抱える人々がいます。これが異食症です。異食症はさまざまな形を取り、その症状や原因は個人によって異なります。このコラムでは、異食症の特徴や診断基準、合併症について探ってみましょう

異食症とは

医療の専門職が並んでいるイラスト

異食症(いしょくしょう)は、通常の食事以外の非常に異常な物質を摂取したいという強い衝動を持つ状態を指します。一般的には食べ物ではないもの(例: 氷、土、髪の毛、紙、石、石灰など)を食べたいという欲求が主な特徴です。異食症はさまざまなタイプがあり、症状や原因は個人によって異なる場合があります。

異食症の主なタイプと特徴、その対応方法について

以下に、異食症の主なタイプと特徴、対応方法をまとめますが、重要なことは、専門機関や医師に相談しましょう。

ピカ食症(Pica Disorder)

原因

栄養欠乏、発達障害、知的障害、自閉症スペクトラム障害、精神障害、ストレス、幼児期の探索行動など様々な要因が関与している可能性があります。

特徴的な異食

非栄養的な物質や非食品を摂取する傾向があります(例: 氷、土、紙、石、石灰、髪の毛など)。

対応方法

医師の指導のもと、栄養バランスの取れた食事や栄養補助食品の摂取、認知行動療法、行動療法、ストレス管理などが含まれる総合的なアプローチが取られます。

食物拒食症(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder; ARFID)

原因

食べ物の臭い、見た目、食感などに対する過敏性、トラウマ、発達障害、知覚過敏、特定の食品への嫌悪感などが関与する可能性があります。

特徴的な異食

特定の食品の摂取を拒否し、偏った食事パターンが見られます。

対応方法

食事の支援や指導、嫌悪感の緩和を目指す認知行動療法、感覚統合療法、心理療法、栄養補助食品の利用、食品の調理法の変更などが行われます。

ラプトフェリア(Rapunzel Syndrome)

原因

精神的な要因やストレス、トラウマ、摂食障害などが関与する可能性があります。

特徴的な異食

髪の毛を食べる症状(トリコファジア)が見られます。

対応方法

内科的な処置が必要な場合があります。心理療法や栄養カウンセリングも行われることがあります。

異食症は、身体への重大な危険や栄養不足を引き起こす可能性があるため、専門家のガイダンスと治療が重要です。早期の介入や適切な治療プランにより、異食症の症状を軽減させることができます。自分自身や身近な人が異食症の症状を経験している場合は、専門機関や医師に相談することをお勧めします。

異食症の診断基準と治療法

書き込むような作業をしているイラスト

診断基準

異食症の診断は、一般的に以下の診断基準を考慮して行われます。

DSM-5に基づく診断基準

異食症の診断基準の一つであるDSM-5によると、異食症の診断にはいくつかの要素があります。異食症では、非栄養的な物質を摂取する衝動が持続的に現れ、年齢や発達レベルに合わない特徴が見られます。また、摂取される物質が一般的に受け入れられないか、社会的に危険であることも考慮されます。専門の医師がこれらの基準を用いて総合的な評価を行い、正確な診断を行います。

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ICD-10に基づく診断基準

ICD-10に基づく異食症の診断基準は、次のような特徴があります。異常な摂食行動があること、通常の食事に含まれない物質を摂取すること、状態が重症で機能や福祉に大きな影響を及ぼすことを示します。医師は優しく状態を評価し、患者さんに合った治療を提案してくれます。専門家のサポートを受けることが大切です。

異食症に関連する合併症とは

異食症には合併症のリスクがあります。消化器の損傷や阻塞、栄養不足、身体的な損傷(歯や胃)、感染症が一般的な合併症です。異食物の摂取や栄養の不均衡が原因で起こります。異食症の治療やサポートを受けることが重要です。

まとめ

異食症は、通常の食事とは異なる物質を摂取したいという異常な欲求を持つ状態です。異食症のタイプには、ピカ食症、食物拒食症、ラプトフェリアなどがあります。異食症には消化器系の問題、栄養不足、身体的な損傷、感染症などの合併症のリスクがあります。診断は専門家によって行われ、治療やサポートが必要です。異食症は重要な問題であり、早期の対応と適切なケアが重要です。専門機関や医師への相談が大切です。

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