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怒りと子育て:子どもに与える5つの影響と怒りのサイクルを断ち切る方法

author:dekkun
怒りと子育て:子どもに与える5つの影響と怒りのサイクルを断ち切る方法と記載されたイラスト

子育てをする親の中には、日常の中で強いストレスを感じることがあり、つい子どもに対して怒りを感じる瞬間が少なくありません。しかし、怒りの感情を子どもに向ける育て方は、子どもの脳や発達に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、「怒りと子育て:子どもに及ぼす5つの影響と怒りのサイクルを断ち切る方法」について、わかりやすく解説します。怒りのサイクルから抜け出すためのアプローチもご紹介しますので、子育て中の方や感情的に怒ってしまう方は、ぜひ最後までお読みください。

「叱る」対「怒る」:その違いとニュアンス

「叱る」行為と「怒る」行為は、しばしば混同されることがありますが、実際には異なるニュアンスを持つ言葉です。「怒る」は感情を爆発させる行動を指し、「叱る」は相手の過ちを指摘し、改善を促すための行動です。以下はそれぞれの意味を辞書から引用して説明します。

「怒る」と「叱る」の違い

「怒る」

不満や不快なことに対して腹を立てる気持ちを表す
よくない言動に対して感情的に反応する
引用:デジタル大辞林「怒る」「叱る」の解説

「叱る」

他人の行動に対して指摘し、厳しく注意を与える。
引用:デジタル大辞林「怒る」「叱る」の解説

たとえば、子どもが言うことを聞かなかった場面で「あんたなんて嫌い!」と表現するのは「怒る」行動です。「ケガをするからダメだよ」と注意するのは「叱る」行動になります。この違いを理解し、感情的な行動に気をつけることが重要です。

怒りの影響:子どもへの5つの影響

持続的な怒りの感情は、子どもに多様な影響をもたらす可能性があります。怒りによる影響が脳の発達に影響を及ぼし、以下の5つの影響が生じることがあります。

他人の評価に過度に敏感になる

他人の評価に過度に敏感になる影響は、自分を客観的に評価する力が低下し、他人の意見や期待に過剰に反応してしまう傾向があります。これは、子ども時代に親の怒りにさらされてきた経験が影響しています。怒りのサイクルが続くと、子どもは「自分は価値がない」「自分を受け入れてもらえない」といった自己否定的な思い込みを抱くことがあります。そのため、他人の評価を過度に気にするようになり、自分を守るために無理な努力を重ねたり、他人に合わせることを選んでしまう可能性があります。

本音を自由に表現することが難しくなる

また、怒りを繰り返す環境で育つと、本音を自由に表現することが難しくなる影響が生じることがあります。怒りの感情が日常化すると、子どもは自分の意見や感情を抑え込むことに慣れてしまい、他人の反応を気にしすぎてしまいます。その結果、自分の本音を述べることが怖くなり、他人に合わせる言動が主体となってしまう可能性があります。

ネガティブな感情を抱えやすくなる

ネガティブな感情を抱えやすくなる影響は、怒りを繰り返す環境で育った子どもが、負の感情を抱えやすくなることを指します。怒りの感情に囚われると、子どもはその感情をどう扱えば良いかを知らずに成長することがあります。その結果、ストレスや不安、悲しみなどのネガティブな感情を上手に処理する方法を学ぶ機会を逃し、心のバランスを保つのが難しくなる可能性があります。

自己肯定感が低下する

自己肯定感が低下する影響は、怒りのサイクルが続く環境で育った子どもが、自分自身に自信を持ちにくくなることを指します。怒りにさらされることで、子どもは自分自身を価値ある存在として受け入れることが難しくなります。その結果、自分に対する信じる力が低下し、他人と比較して自分を劣った存在と感じる可能性があります。自己肯定感の低さは、人生のさまざまな場面で自己表現や挑戦を躊躇する要因となることがあります。

反抗的な態度が増加する

反抗的な態度が増加する影響は、怒りのサイクルが続く環境で育った子どもが、反抗的な態度を示しやすくなることを指します。怒りを受けることが日常化すると、子どもは逆に反抗的な態度をとることで、自分を守ろうとする傾向があります。これは、怒りの感情に対抗するための一種の防衛反応とも言えます。しかし、この反抗的な態度が学習されると、人間関係や社会生活において困難を引き起こす可能性があります。

考え方を改めましょう!子どもを過度に怒ってしまった場合の3つのアプローチ

「怒る子育て」の習慣が一度身につくと、親としての行動を変えることは簡単ではありません。しかしこの状態が続くと、子どもの心には深い傷が残り、回復が難しくなることもあります。

教育方針を転換することは挑戦的かもしれませんが、子どもとの接し方を変えることは極めて重要です。もし子どもに対して怒りすぎてしまったと感じる場合、以下の3つの方法を試してみることをおすすめします。

子どもを過度に怒ってしまった場合の3つのアプローチ

  • 進歩を褒める
  • 子の気持ちを聴く
  • 愛情と感謝を示す

以下では、これらのアプローチを詳しく解説します。子どもに対して怒りすぎてしまったと感じる親御さん、また子どもの成長とともに怒りっぽさを感じる方々にとって、参考になる情報かもしれません。

進歩を褒める

学業やスポーツなどの成果や取り組み方に拘わらず、子どもが頑張った部分や前進した点を見つける習慣は非常に大切です。たとえ小さな進歩でも、親からの賞賛の言葉を受けることで、子どもの自己評価が向上し、成功体験を積み重ねる機会となります。 仕事が途中でも、進捗が25%(4分の1)でも、その取り組みを褒めることが効果的です。ただ結果だけに注目するのではなく、成績が上がらなかった部分だけを指摘することは、子どもの自信を揺るがせる恐れがあります。どんな小さな進歩でも褒める癖を身につけることをおすすめします。

子の気持ちを聴く

子どもの心情に耳を傾けることで、子どもは自分の感情を大切にできると感じるでしょう。このようなコミュニケーションの増加は、子どもの心の成長だけでなく、親子関係の深化にも繋がります。 子が怒っているとき、彼らの視点や気持ちを理解するのは難しい場合もあります。しかしその子どもの気持ちを聴くことで、怒りを抑える一歩となることがあるかもしれません。子どもがどのように感じているのかを知ることで、冷静な反応が可能になります。

愛情と感謝を示す

子どもは常に親からの愛情を求めています。遠慮せずに、愛情や感謝の気持ちを積極的に伝えることが重要です。親は「黙っていても理解されるだろう」と思いがちですが、子どもは大人と同じように感情を理解するのが難しく、はっきりとしたコミュニケーションが必要です。

親の役割!怒りを抑えた子育てへの転換法

子供のイヤイヤ期から思春期にかけての時期、子供の成長とともに親も長い間にわたって怒りを交えながら子育てをしてきた方は少なくありません。しかしながら、怒りによる子育ての長期化は子供に大きな悪影響を与える可能性があります。次に示すのは、怒りをコントロールし、より健全な子育てへと転換するための方法です。これらの方法を試してみることで、少しずつ怒りから抜け出すサポートを得られるでしょう。

完璧主義を手放す

子育てにはストレスが付きものです。完璧を求めすぎないように心がけましょう。自分ができていないと感じる部分を受け入れることから始め、自己評価を穏やかに保ちましょう。完璧な子育ては難しいもので、誰だって戸惑うことがあります。他人と比べるのではなく、自分が頑張っていることを認めつつ、改善点に焦点を当ててみてください。

SNS情報に惑わされない

SNSには多くの情報が溢れていますが、すべてが正しいわけではありません。自分の子供と向き合うことを優先しましょう。SNSの投稿には素敵な瞬間が多く披露されていますが、それは実際の日常の一部に過ぎません。他人の成功や理想的な状況に囚われるのではなく、家族に合ったアプローチを見つけることを重視しましょう。

恐怖をもたらす叱り方を避ける

身体的な暴力や精神的な脅しは避けましょう。これらの手法は一時的には効果があるかもしれませんが、子供にとってなぜ叱られているのかが理解しづらくなります。また、過度の恐怖はトラウマを引き起こし、子供の心の成長を妨げることがあります。叱る必要がある場合は、理由や改善方法を明確に伝えるように努めましょう。

両親で同時に叱らない

両親が同時に子供を叱ると、子供は孤立感を感じてしまうことがあります。このため、一方がリードし、もう一方がサポートする役割分担が有効です。片方の親が不在の場合は、近くの親戚や友人に助けを求めることも検討しましょう。子供には頼りになる存在が必要です。子供の信頼を築くために、叱った後のフォローアップも考慮してみてください。

怒りの子育てを乗り越えるための実践的アプローチと工夫

親が直面する怒りの子育てに関する一般的な課題について、以下で取り上げます。これにより、より理解しやすく、実践的なアプローチをご紹介いたします。

配偶者(夫・妻)の怒りに対処する方法

子育て中の怒りに配偶者が常に怒っている場合、穏やかなコミュニケーションが求められます。心を通わせるために、共通の時間を確保し、互いの気持ちを理解し合う場を設けることが大切です。怒りが子供に与える影響を考えると、相互理解が肝要です。必要に応じて、カウンセリングや育児コミュニティのサポートを利用することも一つの方法です。

子供を叱った後の適切な言葉

子供を叱った後、再び関係を築くためには、温かな言葉が必要です。子供は親の反応に敏感であり、愛情が不変であることを感じることが重要です。「大丈夫、君のことが大好きだよ」といった言葉を使って、子供の心を安定させるよう心がけましょう。

まとめ

「怒りと子育て」のテーマに焦点を当て、子どもに及ぼす影響や怒りのサイクルを断ち切る方法についてご紹介しました。怒りが子育てに与える様々な影響や、その影響を軽減するための具体的な手法を学びました。怒りのサイクルを理解し、子どもとの関係をより健全なものにするために、ぜひこれらのアプローチを実践してみてください。あなたの子育てがより穏やかで成果のあるものとなることを願っています。

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