家族の大切な一員が突然判断能力を失うことになったら、どうすれば良いのでしょうか?老いや病気、事故などによって、大切な人が自分の意志を適切に伝えられなくなった場合、私たちにはどのような選択肢があるのでしょうか?この記事では、そんな時に力になってくれる「成年後見制度」について、その概要と活用方法をわかりやすく解説します。家族を守り、その権利を確実に保護するための大切な知識を、一緒に学んでいきましょう。
成年後見制度って何?
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などで判断力が十分でない人を守るための制度です。この制度には、人の判断力に合わせていくつかの種類があります。
種類と特徴
補助
判断力がいくらか足りない人のためのもの。補助人が支援します。必要に応じて、監督人がつくこともあります。
保佐
判断力がかなり不十分な人のためのもの。保佐人が支援します。
後見
ふだんから判断力がない状態の人のためのもの。成年後見人が支援します。
任意後見
この制度は、判断力が不十分になる前に本人が決めておく契約です。任意後見契約に基づいて、任意後見人が支援します。この契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選ぶと効力を持ち始めます。
このように、成年後見制度は、判断力の程度に応じて異なる支援を提供し、その人の権利を守るために作られています。
「後見制度」ってどんなもの?
後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などで、普段から判断力が不足している人を支えるための制度です。この制度では、家庭裁判所が特別な手続きを行い、「成年後見人」という支援者を指定します。
成年後見人の役割って何?
成年後見人は、判断力が不十分な人の代わりに大切な契約を結んだり、必要に応じて契約をキャンセルしたりします。この人は、判断力が不足している人のお金や財産をしっかり管理し、その人が日常生活で困らないように配慮する大切な役割を担います。
「保佐制度」って何だろう?
保佐制度は、認知症や知的障害、精神障害などで、ひとりでの判断がとても難しい人をサポートするための制度です。この制度では、家庭裁判所が特別な手続きをして、「保佐人」という援助者を決めます。
保佐人の役割とは?
保佐人は、判断力が大幅に不足している人のために、大切な決定に同意することや、必要に応じてすでに行われた行為を取り消すことでサポートします。この人は、日常生活で困らないように気を配ります。また、特定の条件下で、その人に代わって契約を結ぶ権限を持つこともあります。
「補助制度」ってどんなもの?
補助制度は、認知症や知的障害、精神障害などで判断力が完全ではない人をサポートするための制度です。この制度では、家庭裁判所が特別な手続きを行い、「補助人」という援助者を指名します。
補助人の役割って何?
補助人は、判断力がいくらか足りない人のために、大事な決定に同意したり、必要に応じて行動を取り消したり、代わりに行動することで支援します。この人は、日常生活で困らないように配慮する役割を持っています。補助制度を利用する際は、どのようなサポートが必要かを事前に定める申立てが必要です。
「任意後見制度」ってなに?
任意後見制度は、今は判断力があるけれど、将来的にそれが不十分になるかもしれない人が、事前に準備しておくための制度です。この制度では、公正証書で「任意後見契約」を結び、将来判断力が足りなくなった時に、その契約に基づいて任意後見人がサポートします。
どうやって使うの?
任意後見契約を結ぶには、公証役場で手続きを行います。この契約は、家庭裁判所が「任意後見監督人選任の審判」をすると、正式に効力を持ち始めます。
成年後見制度を使うと、どんな影響がある?
以前は、後見制度や保佐制度を利用すると、いくつかの資格や職業が制限されることがありました。例えば、特定の職業に就けなくなったり、営業許可が得られなくなることがありました。
しかし、令和元年に改正された法律により、こうした権利制限は取り消されました。今では、資格や職業に必要な能力が個々に審査され、判断されるようになります。つまり、成年後見制度を利用しても、自動的に資格や職業が制限されることはなくなったんです。
注意点
ただし、この新しい制度の施行日は職業によって異なります。例えば、介護福祉士や教員、医師などの資格が、施行日によって変わるので注意が必要です。また、会社の役員などに関する法律の変更もあり、令和3年3月1日から施行されます。
成年後見人はどうやって選ばれるの?
家庭裁判所では、成年後見人の候補者が、その役割を果たすのに適しているかどうかをチェックします。時には、申立てに書かれた候補者が選ばれないこともあります。その場合、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職、または法律や福祉に関する法人が成年後見人に選ばれることがあります。
でも、誰が選ばれたかについては、異議を申し立てることはできないんです。また、一部の人は成年後見人になることができません。たとえば、未成年者や、以前に成年後見人を解任された人、破産者で復権していない人、本人と訴訟の経験がある人やその家族、行方不明の人は成年後見人になれません。
成年後見制度を使うのはいつ?
障害を持つ子どもの親が亡くなった後、成年後見制度は以下のような状況で役立ちます。
後見の場合
重度の障害があるため、日常生活や財産管理で判断力が不足している子どものために、介護サービス契約や金融取引を行う必要がある場合。家庭裁判所に申し立てをして、成年後見人を指定し、これらの契約や管理を行います。
保佐の場合
判断力がかなり不足している障害を持つ子どものために、特定の契約(例えば、住居のレンタル契約や医療サービスの契約)を結ぶ必要がある場合。家庭裁判所に申し立てをし、保佐人に代理権を与えて、これらの契約を行います。
補助の場合
軽度から中度の障害を持つ子どもが、日常の決定に不安を感じる場合。家庭裁判所に申し立てをして、補助人に日常生活や財産管理のサポートをしてもらいます。この際、特定の契約や取り消し可能な行動について、同意権や代理権を申し立てることが重要です。
これらの制度は、親亡き後も障害を持つ子どもの生活をサポートし、その権利を保護するために利用されます。
成年後見制度を使うにはどうすればいい?
成年後見制度を利用するには、まず家庭裁判所に後見、保佐、補助の開始を申し立てる必要があります。申し立てをする際には、以下のような書類が必要です。
必要な書類
- 申立書
- 申立手数料
- 登記手数料
- 郵便切手
- 戸籍謄本、住民票
- 成年後見に関する登記事項証明書
- 診断書など
他にも、状況によって必要な書類があるかもしれません。
成年後見制度をスムーズに進めるためには?
成年後見制度の手続きをスムーズに進めるためには、弁護士や専門家に依頼するのがおすすめです。専門家は、必要な書類の準備や申立てのプロセスについて詳しく知っているため、手続きを効率的かつ正確に行うことができます。
成年後見制度の手続きってどんな感じ?
成年後見制度の手続きの流れは、一般的に以下のようになっています。
- 手続き案内
成年後見制度の開始手続きや、申立てに必要な書類について、家庭裁判所や弁護士等から説明を受けます。
- 申立て
本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。主な必要書類には申立書、診断書、申立手数料、登記手数料、郵便切手、戸籍謄本などがあります。詳細は家庭裁判所の一覧表で確認できます。
- 審問・調査・鑑定
申立て後、裁判所の職員が申立人や後見人候補者、本人から事情を聞くことがあります。本人の判断能力について、鑑定が行われることもあります。
- 審判
家庭裁判所が後見等の開始審判をし、適任と思われる人を成年後見人に選任します。場合によっては弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者が選ばれることもあります。成年後見人の報酬は、仕事の内容に応じて家庭裁判所が定めます。
これらの手続きを通じて、成年後見制度が適切に運用され、支援を必要とする人の権利が守られます。
鑑定って何するの?
鑑定は、本人の判断能力がどれくらいあるのかを医学的に判断する手続きです。家庭裁判所は、後見や保佐の開始審判にあたって、医師にこの鑑定を依頼します。これは、申立て時に提出される診断書とは別のものです。
鑑定の費用
鑑定には別途費用がかかります。費用は鑑定を行う医師や、その労力に応じて決められますが、多くの場合、10万円以下です。詳しくは「成年後見関係事件の概況」で確認できます。
申立てを取り下げるには、家庭裁判所の許可が必要です。特に、成年後見人の選任に不満があるからといって取り下げることは、本人の利益を最優先に考えると、原則として許可されないとされています。
つまり、申立てを取り下げたい場合は、まず家庭裁判所に連絡し、許可を求める必要があります。その際、本人の利益や状況を考慮した上で、裁判所が判断を下します。
成年後見人の役割って何をするの?
成年後見人の仕事は、本人の意志を大切にしながら、その人の心身の状態や生活状況に気を配りつつ、必要な代わりになる行動をとることや、財産をきちんと管理することです。
具体的には、医療や介護、福祉サービスの契約を結んだり、預貯金の管理や不動産の世話をすることが主な任務です。
成年後見人になったら、役割が終わるまでの大まかな流れは、以下の通りです。
- 成年後見人として選ばれる。
- 本人のために必要な契約や管理を行う。
- 状況に応じて裁判所に報告をする。
- 本人の状況が変われば、その変化に合わせて対応する。
- 成年後見人としての役割が終了するまで、本人の利益を守り続ける。
成年後見人の役割は、本人が自分のことを決められない時に、その人の生活を守り、財産を管理する大切な仕事です。
後見監督って何?
後見監督とは、家庭裁判所が成年後見人をチェックすることを言います。成年後見人は、裁判所に選ばれた人で、お金や財産を管理する大きな権限を持っています。でも、そんな大きな権限があると、間違った使い方をされる可能性もあるから、裁判所がその仕事がちゃんと行われているか見守ります。
何か問題があったら、裁判所はその問題を直すように言います。これが後見監督の大切な役割です。
家庭裁判所は成年後見人をどうやってチェックするの?
家庭裁判所が成年後見人を監視する方法には、以下のようなものがあります。
報告の確認
定期的に成年後見人からの仕事の報告や財産のリストを提出してもらい、それをチェックします。
問題があれば調査
問題が見つかったら、銀行に情報を聞いたり、裁判所の調査官が実情を調べたりします。
必要な措置
問題に応じて、財産の管理を命じたり、専門家を新たに後見人として追加したりします。
場合によっては解任
重大な問題があれば、成年後見人を解任することもあります。
不正があれば告発
成年後見人が犯罪に手を染めていた場合、裁判所が刑事告発をすることもあります。
家庭裁判所は、成年後見人が責任を持って仕事をしているかしっかりと見守り、問題があれば直ちに対応を行います。
家庭裁判所が成年後見人のチェックをする時、時には成年後見監督人を指名して監督を任せます。特に、成年後見人の不正行為が問題になっているときや、被後見人の財産がかなり多い場合(そして、後見制度支援信託が使われていないとき)に、成年後見監督人が選ばれることが多くなっています。これは、後見人がきちんと仕事をしているかをもっとしっかりと監視するためです。
成年後見監督人を選ぶかどうかは、家庭裁判所が決めることです。そのため、成年後見監督人が選ばれたことに対して不服を申し立てることはできません。裁判所の決定には異議を唱えることができないのです。
被後見人の家を売ったり貸したりするには?
被後見人の家や土地を売却したり、貸し出したりする場合、とても慎重に進める必要があります。なぜなら、被後見人の住む場所を変えると、その人の心や生活に大きな影響があるからです。これには、被後見人が今住んでいる場所だけでなく、将来住むかもしれない場所も含まれます。
家庭裁判所の許可がないと、不動産を処分することはできません。成年後見人が不動産を処分したい場合は、家庭裁判所に許可を申し立てる手続きをしなければなりません。
成年後見人と被後見人の利益がぶつかるときは?
成年後見人は、通常、被後見人の財産の管理や決定を代わりに行う権限があります。でも、成年後見人の行動が被後見人の利益に反するときは、どうするかというと、その特定の行為に対しては成年後見人は代理を行えません。
このような場合、被後見人を守るために、家庭裁判所が特別代理人を指名して、その行為を代わりに行います。たとえば、相続の問題で成年後見人と被後見人が利益が衝突する場合や、成年後見人の借金の担保として被後見人の不動産を使う場合などです。特別代理人が選ばれると、公平を保ちながらその問題を解決できます。
成年後見人にはお金もらえるの?
成年後見人は、している仕事の内容に応じて、被後見人の財産から報酬をもらうことができます。報酬をもらうには、家庭裁判所に報酬の支払いを申し立てる必要があります。申し立てるときは、後見事務報告書や財産目録、通帳のコピーなどの書類と手数料800円を提出します。
報酬の額は、裁判官がその時々の状況や成年後見人の仕事の内容、被後見人の財産の状態などを見て決めます。裁判所によっては、報酬の目安があらかじめ決まっていて、ウェブサイトで公開されているところもあるので、それを確認すると良いでしょう。
成年後見人が責任を問われるのはどんなとき?
成年後見人が不正なことをしたり、後見の仕事にふさわしくない行動があったりした場合、家庭裁判所はその人を成年後見人から外すかもしれません。
もし成年後見人が不正な行為で被後見人に損害を与えたら、その損害をお金で弁償する必要があります。さらに、背任罪や業務上横領罪などの刑事責任を負うこともあります。
たとえ被後見人が家族だったとしても、法律の前では関係なく、刑罰を受けることになります。親子関係は刑の軽減理由にはなりません。
被後見人が亡くなったらどうする?
被後見人が亡くなると、成年後見人の仕事は終わります。その時には、成年後見人は以下のことを行う必要があります。
報告と登記
- 死亡診断書のコピーか、戸籍・除籍謄本を添えて家庭裁判所に報告する。
- 法務局に後見終了の登記を申請する。
事務の清算
- 被後見人が亡くなってから2ヶ月以内に、管理していた財産の計算を行う。
- もし相続人が不明な場合は、相続財産清算人や管理人の選任を申し立て、選任された人に管理計算を報告する。
終了報告
家庭裁判所から求められた場合は、相続人への財産管理の引継ぎ報告や、行った管理計算の報告をする。
成年後見人は、被後見人の死後も必要な手続きを適切に完了させ、責任を果たさなければなりません。
被後見人が亡くなった後、成年後見人は何をする?
被後見人が亡くなると、成年後見人の仕事は基本的に終わりますが、以下のような状況ではまだいくつかの事務を行うことができます。
建物の修理
被後見人が持っていた建物の修理など、特定の財産の保存行為を行うことができます。
医療費の支払い
支払期限が来た被後見人の医療費などの債務を弁済することができます。
家庭裁判所の許可が必要な行為
被後見人の火葬や埋葬に関する契約、被後見人の財産の保存に必要な行為は、家庭裁判所の許可を得た上で行うことができます。
ただし、成年後見人が被後見人の葬儀を行うことは法律上認められていません。これらの行為は、成年後見人のみに限られ、保佐人、補助人、任意後見人、未成年後見人にはできません。
成年後見人がマイナンバーを扱うときの注意点は?
成年後見人が被後見人のマイナンバーを扱う場合、いくつか重要なことに気をつけなければなりません。
個人情報の保護
マイナンバーはとても重要な個人情報です。成年後見人は、被後見人の状況や、手続きでマイナンバーがどれだけ必要かを考えて、その取り扱いを慎重に決めなければなりません。
法律の遵守
マイナンバーを使えるのは法律で定められた場合だけです。取得した場合には、番号法に違反しないように注意し、適切に管理する必要があります。
家庭裁判所への提出:
家庭裁判所の後見関連手続きでマイナンバーを提出する必要は普通ありません。もし提出する必要がある書類にマイナンバーが書かれている場合は、その部分を黒塗りして読めないようにするなどの対策をしてください。
これらの点は、保佐人、補助人、任意後見人、未成年後見人も同様に適用されます。マイナンバーの取り扱いには常に注意して、被後見人の個人情報を守りましょう。
まとめ
成年後見制度は、家族や大切な人が自己決定能力を失った時に、その権利と尊厳を守るための重要な手段です。この制度を理解し、適切に活用することで、愛する人の生活を守り、その意志を尊重することが可能になります。日々の生活の中で突如として訪れるかもしれないこのような状況に備えて、今から知識を深めておくことが大切です。この記事が皆さんの家族の未来を守る一助となれば幸いです。