発達障害児療育ポータルサイト 「dekkun.」

【理解しやすく解説】後見制度とは? – 成年後見人の役割と家庭裁判所のプロセス

author:dekkun
【理解しやすく解説】後見制度とは? - 成年後見人の役割と家庭裁判所のプロセスと記載されたイラスト

私たちの社会には、認知症、知的障害、精神障害などにより日常的な判断が難しい人々がいます。これらの人々を支えるためには、特別な配慮と法的支援が必要です。ここで、「後見制度」という重要な制度に焦点を当て、その役割とプロセスを解き明かします。成年後見人の責任とは何か、また家庭裁判所がどのように関わるのかを理解することで、社会の一員として支援の必要性と方法を学びましょう。

成年後見人って何?

成年後見人とは、認知症、精神障害、知的障害などで判断能力が低下した人をサポートするために、成年後見制度の下で法律行為を代行する人のことです。成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」があります。

法定後見

既に判断能力が低下している人をサポートします。家庭裁判所が法定後見人を選任し、判断能力の低下度合いに応じて「成年後見人」「保佐人」「補助人」に分類されます。医師の診断や本人との面談を基に、家庭裁判所が適切な種類を決定します。

任意後見

まだ判断能力がある間に、将来のためのサポート体制を契約で決めておく制度です。任意後見人がサポートする内容を事前に契約します。判断能力が低下してからは、家庭裁判所に申立てをして任意後見人によるサポートが開始されます。

法定後見では、判断能力の低下した本人が行った契約を無効にすることが可能ですが、任意後見では本人の意思を尊重し、任意後見人が不利益な契約を取消すことはできません。

成年後見人になれる人について理解しよう

成年後見人になるためには特別な資格は必要ありませんが、以下の条件に当てはまる人は成年後見人になることができません。

未成年者

未成年の人は後見人になることができません。

破産者

破産している人も成年後見人になることはできません。

過去に解任された者

以前に成年後見人や保佐人、補助人を務めていたが、家庭裁判所から解任された人は再度選任されることはありません。

訴訟関係者

過去に被後見人に対して訴訟を提起した者、その配偶者、直系血族も後見人になることはできません。

行方不明者

現在の所在が不明な人は後見人になることはできません。

実際に後見人になる人の大部分は専門家(弁護士や司法書士など)で、全体の約80.9%を占めています。親族が後見人になるケースは約19.1%ですが、後見開始の申立てで親族を後見人候補として希望するケースは全体の約23.1%に過ぎません。これは、親族が後見人になる申立てがそもそも少ないことを意味しています。

成年後見人の職務と役割をわかりやすく解説

成年後見制度には法定後見と任意後見がありますが、ここでは法定後見人の中で最も権限が広い成年後見人の職務と役割について説明します。

財産管理

成年後見人は、本人の代わりに財産を管理し、本人の財産上の利益を守ります。これには、預貯金の管理、不動産の処分、税金の申告、年金の申請、遺産分割協議への参加、保険金の受け取り、契約の締結や取り消しなどが含まれます。

身上監護

判断能力を失った本人の生活の安全と健康を守るため、医療契約や介護契約障害福祉サービスの手続き、介護保険や障害福祉サービスなどの認定申請、住居の賃貸契約などを行います。

職務報告

  • 成年後見人は、定期的に家庭裁判所に職務の報告を行う必要があります。これは年に1回、後見等事務報告書、財産目録、預貯金通帳のコピー、本人収支表などを提出することを含みます。

成年後見人は、本人の財産と身上を守るための重要な役割を果たし、適切な職務遂行を報告

することで、家庭裁判所の監督の下、本人の最善の利益を確保します。この役割は、特に判断能力の低下した人の生活を保護するために重要です。

成年後見人の選出手続きを詳しく理解しよう

成年後見人の選出には、法定後見と任意後見の二つの異なるプロセスがあります。それぞれのプロセスを詳細に見ていきましょう。

法定後見人の選任手続き

申立ての準備

本人や本人の四親等以内の親族が、家庭裁判所に申立てを行います。このプロセスには、戸籍謄本や診断書などの必要書類の準備が含まれます。

審査と面談

申立て後、家庭裁判所で書類の審査が行われ、申立人と本人の面談を実施します。この面談は、本人の現在の状況やニーズを理解し、適切な成年後見人を選任するための重要なステップです。

判断能力の確認

家庭裁判所の調査官が本人と面談を行い、本人の判断能力を確認します。これは、後見、保佐、補助のいずれが適切かを判断するための基礎となります。

成年後見人の選任

調査結果をもとに、家庭裁判所が判断能力の低下の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」のいずれかを選び、最も適切な成年後見人を選任します。選任までの期間は通常1~2ヶ月かかります。

職務開始

成年後見人が選任された後、本人の財産調査や財産目録の作成、家庭裁判所への報告を行い、職務を開始します。報告は原則年に1回行われ、本人の財産の適切な管理と保護を保証するための重要な役割を果たします。

任意後見人の選任手続き

契約の締結

本人が判断能力がある間に、任意後見人となる人を選び、サポート内容に関する契約を公正証書で締結します。この契約は、将来の判断能力の低下に備え、本人の意思に基づいて事前に準備されます。

後見登記

公証人が法務局に後見登記を依頼し、誰が任意後見受任者であるか、その代理権の範囲が登記されます。

監督人の選任

本人の判断能力が低下したとき、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てます。任意後見監督人は、任意後見人が財産管理などを適切に行っているかを監督する役割を持ちます。

職務の開始

家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見人としての職務が開始されます。任意後見人は本人の財産管理や日常生活のサポートなど、契約で定められた範囲内での活動を行います。

どちらのプロセスも、本人の利益と保護を最優先に考えて慎重に行われます。法定後見は判断能力の低下がすでにある場合に適用され、任意後見は将来の判断能力の低下に備えるための手段です。このように、成年後見制度は、判断能力の低下によって日常生活や財産管理に支障をきたす可能性のある人を支援し、その権利を守るために重要な役割を果たしています。

成年後見人にかかる費用を簡単に理解しよう

成年後見制度を利用する際には、法定後見と任意後見でそれぞれ異なる費用がかかります。以下に、それぞれの費用をわかりやすく説明します。

法定後見制度の費用

申立て時の費用

  • 申立て手数料は600円、後見登記手数料は2,600円が必要です。
  • 郵便切手代は約3,000~5,000円程度ですが、家庭裁判所によって異なります。
  • 医師の診断書には数千円、戸籍謄本や住民票には数百円、登記されていないことの証明書には300円がかかります。
  • 必要に応じて鑑定費用や専門家に依頼する場合は、それぞれ追加の費用が必要です。

後見事務の費用

成年後見人には、本人の財産額に応じて月額2~6万円の報酬が支払われます。これは本人が亡くなるまで続きます。

任意後見制度の費用

契約作成時の費用

  • 任意後見契約を公正証書で作成する際には、公証役場に約2~3万円がかかります。
  • 公正証書の作成手数料は約11,000円、公正証書代が約10,000円、登記手数料が2,600円です。

発動後の費用

  • 任意後見人への報酬は契約によって定められ、月額1~3万円が相場です。親族が任意後見人になる場合は無報酬とすることもあります。
  • 任意後見監督人への報酬は、月額1~3万円程度です。

これらの費用は、成年後見制度を利用する際に必要なものであり、制度の運用に伴うコストとして理解する必要があります。特に法定後見の場合は、本人の財産を保護するために必要な専門的なサービスに関連する費用がかかるため、これらのコストを見積もり、計画的に準備することが重要です。

一方、任意後見の場合は、本人の意思に基づいて行われるため、報酬やその他の費用は本人と任意後見人が契約で合意した範囲内で決定されます。親族が任意後見人となる場合、無報酬で行うことも少なくないため、家族関係や経済的状況に応じた適切な選択が可能です。

どちらの制度も、成年後見人が適切に本人の財産管理や身上監護を行うために重要な役割を担っており、これらの費用は本人の利益を守るために必要な投資と考えることができます。

成年後見人をつけるメリットをわかりやすく紹介

成年後見人をつけることには、以下のような大きなメリットがあります。

詐欺や不要な契約の防止

判断能力が低下している人は詐欺のターゲットになりやすいですが、成年後見人がいることでこれを防げます。また、不要な契約を防ぎ、すでに結ばれた契約を取り消すこともできます。

預貯金の管理

成年後見人は預貯金の管理を行い、本人の生活費や介護費用の支払いを確実に行えます。また、本人の財産を不適切に使うことを防ぐこともできます。

介護施設などとの契約

判断能力が低下している本人に代わり、介護施設との契約を締結できます。介護保険の手続きも行えます。

不動産の処分

本人の代わりに不動産を売買することができますが、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が必要です。

相続手続き

相続手続きを進めることができ、本人に不利な遺産分割協議を避けられます。

保険金の受け取り

保険金の請求や受け取りを行うことができます

このように、成年後見人は、判断能力が低下した人の金銭管理、契約、財産管理などを適切に行い、本人の権利や利益を守る重要な役割を担います。ただし、成年後見人をつけるには費用や手間がかかるというデメリットもあります。親族が成年後見人になる場合も、慎重な判断が必要です。

成年後見人をつけるデメリットってなに?

成年後見人をつけるメリットは多いですが、以下のデメリットも理解しておくことが大切です。

報酬の支払いが必要

専門家が成年後見人になる場合、管理財産の額に応じて月額2万円から6万円程度の費用がかかります。特別な職務を行った場合には、追加の報酬が必要になることもあります。

手続きに手間と時間がかかる

成年後見人を選任するには、家庭裁判所への申立てが必要で、戸籍謄本、診断書、登記されていないことの証明など多くの書類が必要です。これらの書類を集めるのに手間と時間がかかります。

財産の自由な使用が制限される

成年後見人は本人の利益のためにのみ財産を使用できるため、親族が本人の財産を自由に使うことはできません。例えば、本人の財産での家のリフォームなどが本人の利益にならない場合は実行できない可能性があります。

親族間のトラブルのリスク

親族が成年後見人になると、使い込みなどの不正が疑われることがあり、トラブルの原因になることがあります。

財産の運用や処分が難しくなる

成年後見制度では、本人の財産を保護するために、不動産の処分などに家庭裁判所の許可が必要です。また、資産運用や相続税対策のための生前贈与などが制限されることもあります。

任意後見制度では、契約により資産運用や相続税対策が可能ですが、法定後見ではこれらの行為が難しくなります。成年後見人を選ぶ際には、これらのデメリットも考慮に入れる必要があります。

まとめ

今回は、後見制度と成年後見人の役割について詳しく見てきました。この制度は、判断能力に制約のある人々が安全で健全な生活を送るための重要な支柱です。家庭裁判所の役割や成年後見人の選任プロセスを理解することは、私たち全員にとって重要です。認知症や障害を持つ人々へのより良い支援方法を学び、共に支え合う社会を築く第一歩としましょう。

後見開始の手続きについての理解、家庭裁判所の役割とステップと記載されたイラスト
私たちの社会では、誰もが年を取り、時には判断能力に影響を及ぼす健康上の問題に直面することがあります。このような…
calendar_today
親亡き後と記載されたイラスト
「親亡き後問題」とは何か? 多くの親御さんが心配する大きな課題があります。それは、「もし自分がいなくなったら、…
calendar_today

dekkun.に相談しよう

協力専門職の一部をご紹介 ・保育士 ・社会福祉士 ・精神保健福祉士 ・介護福祉士 ・児童指導員 ・音楽療法士 …

looks 人気の療育コラム

1
ADHDの大人の顔の特徴:見逃されがちなサインと理解を深める と記載されたイラスト

ADHDの大人の顔の特徴:見逃されがちなサインと理解を深める

ADHD(注意欠陥多動性障害)は、子供の発達障害としてよく知られていますが、実際には多くの大人もこの障害を抱え…

calendar_today
2
【ダウン症の軽度と重度】知っておきたい違いと共通点と記載されたイラスト

【ダウン症の軽度と重度】知っておきたい違いと共通点

ダウン症は、私たちが多くの異なる形で出会うことがある遺伝的な状態です。この状態は、個々の人によってさまざまな特…

calendar_today
3
赤ちゃんの手足バタバタは不機嫌だけじゃない!その理由とは?と記載されたイラスト

赤ちゃんの手足バタバタは不機嫌だけじゃない!その理由とは?

赤ちゃんの成長過程は、親にとって一つ一つが驚きと喜びに満ちたものです。特に、生後数か月の赤ちゃんが手足をバタバ…

calendar_today
4
奇声を上げる2歳児は発達障がい?成長目安と声を出す原因をわかりやすく解説と記載されたイラスト

奇声を上げる2歳児は発達障がい?成長目安と声を出す原因をわかりやすく解説

2歳児が奇声を上げることは、多くの保護者にとって疑問や不安の種です。一体、奇声は発達障がいのサインなのでしょう…

calendar_today
5
アスペルガー症候群とコミュニケーションの壁、怒られると黙る理由と対処法と記載されたイラスト

アスペルガー症候群とコミュニケーションの壁、怒られると黙る理由と対処法

アスペルガー症候群を持つ人々が怒られたときに黙ってしまう、その深層にある理由と、このような状況でどのように対応…

calendar_today
6
【ADHDの顔つきと行動の特徴】ADHDの子どもたちにみられる特徴についてと記載されたイラスト

【ADHDの顔つきと行動の特徴】ADHDの子どもたちにみられる特徴について

最近、発達障がいと診断される子どもたちが増えており、親たちは自分の子供がその中に含まれるのではないかと心配に駆…

calendar_today
7
「他人に興味がない」ASDの理解への一歩と記載されたイラスト

「他人に興味がない」ASDの理解への一歩

私たちの周りには、さまざまな思考や感情を持つ人がいます。中でも、「他人に興味がない」と感じる人もいるでしょう。…

calendar_today
8
ADHDの軽度・中度・重度: 特性、症状、診断基準の違いを理解する と記載されたイラスト

ADHDの軽度・中度・重度: 特性、症状、診断基準の違いを理解する

私たちは個々に異なる特性や個性を持っており、その中には注意欠如・多動症(ADHD)と呼ばれる発達障害を抱える人…

calendar_today
9
ギフテッドの特徴や顔立ち、国際的比較などについて解説と記載されたイラスト

ギフテッドの特徴や顔立ち、国際的比較などについて解説

「ギフテッド」という言葉は、特別な才能や能力を持つ人々を指すものですが、その特徴や顔立ちは一目では分かりません…

calendar_today
10
一歳半の子の発達障害を見逃さない、初期サインと対応策の完全ガイドと記載されたイラスト

一歳半の子の発達障害を見逃さない、初期サインと対応策の完全ガイド

一歳半のお子様の発達段階と、発達障害の初期サインを識別する方法に焦点を当てています。発達障害の早期発見は、お子…

calendar_today