吃音は、発達障害の一つであり、子どもたちの言語発達に影響を与える重要な問題です。このコラムでは、吃音が発達する時期別に、子どもが抱える特徴と親ができる支援について解説します。親が理解し、適切なサポートを提供することが子どもたちの成長にとって非常に重要です。
言葉が詰まる発達障がい:吃音とは
吃音は話す際に言葉がうまく出てこない発達障害であり、音を繰り返したり、音が伸びたりする症状が特徴です。厚生労働省によれば、明確な原因は分かっていませんが、体質的要因が大きく影響しているとされています。吃音は幼少期の2〜3歳頃に症状が現れることが多く、小学生の頃までに自然に治る子どもが約8割いるとされていますが、一部の人は大人になっても続くこともあります。
吃音は発達障害者支援法の対象となっており、早期の相談と本人が過ごしやすい環境作りが親がサポートできる重要な要素となります。発達障害者支援法は2004年に施行された法律で、アスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、トゥレット症候群、吃音などを発達障害と位置づけ、個別に合った支援を行うことが義務付けられています。
親が吃音を持つ子どもをサポートする際には、以下の点に注意することが重要です。
積極的なコミュニケーション
子どもとのコミュニケーションを大切にしましょう。リラックスした雰囲気で会話を楽しむことが子どもの自信を促進します。
質問を避ける
質問攻めにせず、子どもが自発的に話す機会を与えましょう。子どもが無理なく話せるよう配慮します。
ポジティブなフィードバック
成功体験を褒め、ポジティブなフィードバックを与えることで自己肯定感を高めます。
ストレス軽減
学校や社会的な圧力を軽減し、子どものストレスを最小限に抑えるよう心掛けます。
専門家のサポート
必要に応じて専門家(言語療法士など)のサポートを受けることで、吃音に対する適切なアプローチを見つけることができます。
親の理解とサポートが、子どもが自己を受け入れ、自信を持って生きていくための重要な要素となります。早期の支援と適切な環境が、子どもの吃音に対するポジティブな影響をもたらすことが期待されます。
吃音の症状
吃音の症状は、主に「連発」、「伸発」、「難発」の3つのパターンに分類されます。これらの症状が個別に現れるだけでなく、同時に複数の症状が併発する場合もあります。以下に具体的な症状の例を挙げてみます。
連発
- 「おおおお、おはよう」と最初の1音が詰まる。
- 「もももももももものうち」と最初の1音が詰まる。
伸発
- 「おーーはよう」と音が伸びる。
- 「さーーーきに」、「あいーーすくりーむ」などと音が伸びる。
難発
- 「……お」と最初の言葉が発せずになかなか話し出せない。
- 「……それでね」と最初の言葉が出てこない。
言葉の置き換え
- 言いづらい・苦手な言葉の順序を入れ替える。例えば、「すもももももももものうち」を「もももももももものうち」と言ってしまう。
吃音の症状は個人によって異なるため、これらの例が必ずしもすべて当てはまるわけではありません。さらに、ストレスや環境の変化によって症状が悪化することも考えられます。
吃音に苦しむ子どもたちに対しては、親や周囲の大人が理解し、積極的にサポートすることが大切です。子どもが自信を持って話すことができるような環境を提供し、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、吃音の症状を緩和させることができる場合もあります。
原因は個人の体質に関連するのでしょうか?吃音のタイプは2つあります。
吃音には発達性吃音と獲得性吃音の2つの種類があります。これらの種類によって、発症のタイミングや原因が大きく異なります。
発達性吃音
発達性吃音は子どもの吃音の9割を占めるとされるタイプで、主に発達段階の途中で発症します。その原因は明確には分かっていませんが、体質的・発達的・環境的な要因が関与していると考えられています。
体質的要因
本人の体質が吃音の原因とされます。幼少期から小学校低学年くらいに症状が現れることが多いです。
発達的要因
身体や認知の発達中に何らかの影響が起きたことが原因とされます。
環境的要因
周囲の環境が吃音の発症に影響を与える場合もあります。
子どもの心の中では、吃音による不快感や周囲の反応によってさらに塞ぎ込んでしまうこともあります。
獲得性吃音
獲得性吃音は発達とは関係なく吃音の症状が表れるケースです。2つの種類があります。
獲得性神経原性吃音
頭の怪我や脳の病気が原因となる場合があります。特に事故や高齢者、薬物中毒などに見られます。治療効果は限定的です。
獲得性心因性吃音
トラウマやストレスが原因となる場合があります。過去の辛い経験によって吃音の症状が発現することがあります。このタイプの吃音では治療の適用が見られることもありますが、子どもの場合は獲得性吃音で症状が表れることはほとんどありません。
発達性吃音の多くは体質的要因によるものであり、早期の発症が見られることが一般的です。一方で、獲得性吃音は後天的な原因によって発症するため、子どもの場合は稀です。
吃音に対する理解と適切なサポートが、子どもたちが自信を持ってコミュニケーションを取るために重要です。親や周囲の大人が子どもを温かく受け入れ、必要な支援を提供することで、子どもたちの成長をサポートしましょう。
子どもの吃音の特徴と成長過程について
時期別に子どもの吃音の特徴と変化を見てみましょう。
幼児期(2〜4歳児)
幼児期では、連発や伸発など最初の1音に対する症状が表れやすいです。2語分以上の発話が難しく、「こ、こ、こっぷ」「こーーっぷ」といった吃音が見られることがあります。100人のうち5〜8人が幼児期に吃音が発症するとされますが、多くのケースでこの時期に症状が現れ、その半数は学齢期になる前(小学校入学前)に自然に治ることがあります。
学齢期(小学校時期)
学齢期になると、連発や伸発に加えて難発の症状も増える傾向があります。また、子ども自身がうまく言葉が出せないことを自覚し始めることもあります。この時期になると、話し始める前に「あの」「えっと」といった前置きの言葉を使ったり、話しやすい言葉を文頭に入れ替えたりするなど、相手にうまく伝わるように工夫を始めることがあります。
思春期(中学生〜高校生)
思春期になると、子どもは学齢期よりもさらに工夫をするようになります。会話によっては吃音が目立たないこともありますが、日常の会話では依然として吃音が出ることがあります。思春期では周りに悟られたくないと気にする傾向があり、吃音を隠そうと努力することが増えます。これにより、最初の言葉に詰まってしまう場面が増えることもあります。また、学齢期まで元気に話していた子どもが急に会話を嫌うようになり、無口になるケースも見られることがあります。
子どもの成長とともに、吃音の症状や対応が変化していきます。親や周囲の大人が理解とサポートを提供することで、子どもがより自信を持ってコミュニケーションをとれるようサポートしましょう。必要に応じて専門家のアドバイスも受けることで、子どもの吃音に適切に対処できるでしょう。
吃音がある子どもへの支援方法として、親ができること
子どもの吃音をサポートするために、親ができる3つの支援方法をまとめてみましょう。
周囲で話しやすい環境を整える
最初に大切なことは、子どもが話しやすい環境を家庭内で整えることです。家族や周囲の人に子どもの吃音の特徴や症状を理解してもらい、配慮してコミュニケーションを行うよう促すことが重要です。幼稚園や学校に通っている場合は、教育機関にも吃音について相談しておくと良いでしょう。周りの理解とサポートが子どもの自信に繋がります。
吃音を改善するトレーニングをする
吃音を改善するために、子どもと一緒にトレーニングを行ってみることも有効です。ゆっくりと話す、最初の発声を小さな声で出す、他の改善方法を試してみるなど、子どもが自分に合ったトレーニングを見つけることが大切です。また、家庭内での会話を増やしてリラックスした雰囲気でコミュニケーションを楽しむことも改善に役立ちます。
TMS治療を検討する
TMS(Transcranial Magnetic Stimulation)治療は、脳を磁気刺激する治療方法で、吃音や他の発達障がいにも効果があるとされています。吃音の原因の一つはプレッシャーと考えられており、TMS治療によって緊張を緩和し、リラックス効果が期待されます。ただし、日本での治療はまだ歴史が浅く、専門的な病院が限られているため、興味がある場合は相談してみると良いでしょう。
これらの支援方法を通じて、子どもが自信を持ち、より良いコミュニケーションができるようサポートしてあげましょう。子どもの成長に合わせて適切なサポートを提供し、専門家とも連携しながら子どもの発達を見守っていくことが大切です。
子どもとの会話において心掛けるべき2つのポイント:吃音を持つ子どもへの接し方
吃音がある子どもに対して周囲の人が接する際の2つの心がけは以下の通りです。
話し方をアドバイスしすぎない
子どもが吃音を持っていると、親や周囲の人は何とかしてあげたいという気持ちが湧いてきますが、話し方に対して過度にアドバイスをすることは控えるべきです。あまりにも多くのアドバイスや指導がかかると、子どもにとってプレッシャーになり、緊張が高まって吃音の症状が悪化する恐れがあります。トレーニングや治療も同様に、強制的に行うことは避けるべきです。 適度なアドバイスを心掛けると共に、トレーニングや治療の時間はあらかじめスケジュールとして決めておくことで、子どもが前向きに取り組める環境を作ってあげましょう。
子どもの話を遮らず最後まで聞く
吃音の子どもは、話している途中で遮られることを嫌う場合が多いです。途中で内容を察して早めに答えようとすると、子どもが一生懸命に伝えようとしている気持ちを理解してもらえないことにつながります。なるべく子どもの話を遮ることなく、耳を傾けて最後まで聞いてあげることが重要です。 吃音によって焦りや自分への苛立ちを抱える子どももいますが、子どもが一生懸命に話していることに感謝の気持ちを持ち、笑顔で接することが大切です。子どもの気持ちを尊重し、言葉を大切にする姿勢が、子どもの自信に繋がることでしょう。
これらの心がけを実践することで、子どもが話しやすい環境が整い、コミュニケーションを円滑に進めることができるでしょう。子どもが自分らしく成長できるよう、温かくサポートしていきましょう。
まとめ
吃音は子どもたちの言語発達に影響を与える発達障害の一つです。幼児期と小学校時期では、吃音の特徴として繰り返しや強弱の変化、ブロックなどが見られます。親ができる支援策としては、積極的なコミュニケーション、質問を避ける、聞き手になることなどが挙げられます。また、ストレス軽減や専門家のサポートも大切です。適切なサポートを提供することで、子どもたちが自信を持ってコミュニケーションを取ることができるようになるでしょう。