子どもを持つ親にとって、子の成長と未来を思い描くことは喜びに満ちた瞬間です。しかし、予期せぬ出来事が生じた場合、例えば親権者が亡くなってしまったとき、未成年の子どもたちを守るためには慎重な対応が必要です。未成年の子どもたちに後見人を付けることで、彼らの福祉や利益を保護し、適切なケアを提供することが可能となります。この記事では、未成年後見人の選任について詳しくご説明します。
未成年後見人を選任する申立てについて
親権者が亡くなった場合や親権者がいない場合、未成年の子どもたちを保護するためには、家庭裁判所で未成年後見人の選任を申し立てることが必要です。
例えば、離婚後に単独親権者となった父又は母が亡くなった場合でも、もう一方の親が自動的に親権者になるわけではありません。その場合、未成年後見が開始されることになります。
未成年後見人の選任を申し立てることができるのは、未成年の子ども(意思能力がある場合に限ります)、未成年の子どもの親族、その他に利害関係のある人たちです。また、児童相談所長も申し立てることができます。
遺言による未成年後見人の選任
未成年者に対して、親権を行う者が亡くなる前に、遺言によって未成年後見人を指定することもできます。この方法は家庭裁判所に申し立てる方法以外の選択肢として利用されます。
遺言による未成年後見人の指定は、親権者が自分の死後にも未成年者の世話や財産管理を引き続き信頼できる人物に任せたい場合に有効です。未成年後見人は、親権者が亡くなった後、未成年者の利益を保護し、代理で世話をする役割を担います。
ただし、遺言で未成年後見人を指定する際には、いくつかのルールに従う必要があります。例えば、遺言は法的に有効でなければならないため、特定の要件を満たす必要があります。また、指定する後見人が十分な能力を持ち、未成年者の利益を適切に管理できる人物であることも重要です。
遺言による未成年後見人の選任は、未成年者の将来の安定と福祉を考える上で重要な選択肢の一つとなります。遺言を作成する際には、法的な助言を受けることをおすすめします。
未成年後見人の役割
未成年後見人は、未成年者の法定代理人として重要な役割を担います。彼らの主な任務は、未成年者の監護養育や財産管理、契約など、親権者と同様の法律行為を行うことです。
具体的には、未成年後見人は未成年者に代わって親権を行使します。つまり、未成年者が自分で法的な行為をすることができない場合に、未成年後見人がその代わりに法的な手続きを行います。例えば、学校の入学手続きや医療関連の手続きなどが該当します。
財産管理など
また、未成年後見人は未成年者の財産管理にも責任を持ちます。未成年者の資産を適切に管理し、将来のために適切な投資や経済的な決定を行います。
さらに、未成年者が不法行為を行った場合には、未成年後見人も一定の責任を負うことがあります。未成年者の行動が他の人に対して損害を与えた場合に、未成年後見人がその損害を賠償することが求められることがあります。
未成年後見人の役割は、未成年者の福祉と利益を保護することにあります。そのため、信頼性のある人物を未成年後見人に選任することが重要であり、家庭裁判所での選任手続きを通じて適格な後見人を選定することが求められます。
未成年者が児童養護施設等に入所している場合の親権について
児童養護施設等に入所している未成年者の場合、親権者が死亡した場合でも、特別な措置があります。入所している児童養護施設の施設長などが、親権代行権限を有していて、その子を監護することができるのです。そのため、特別な未成年後見人を選任する必要がない場合もあります。
親権者の死亡で相続が発生した場合
ただし、親権者が死亡して相続が生じた場合には、遺産分割協議や生命保険や預金の解約など相続に関する手続きが必要になります。このような相続手続きのためには、児童養護施設の施設長などが持つ親権代行権限だけでは対応できない場合があります。そのため、未成年者の利益を保護するためには、相続手続きに関しては、家庭裁判所で未成年後見人を選任する必要が生じる場合もあります。
児童養護施設に入所していても、未成年者の将来を考慮して相続手続きを円滑に進めるためには、適切な未成年後見人を選任することが重要です。家庭裁判所の選任手続きを通じて、信頼性のある後見人を選ぶことで、未成年者の利益を適切に保護することができます。
申立てまでの流れ
申立先
家庭裁判所に申立てる場合
未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所
遺言による場合
未成年者の本籍地又は後見人となる
提出書類
家庭裁判所に申立てる場合
未成年後見人選任申立書
遺言による場合
未成年者の後見届
添付書類
家庭裁判所に申立てる場合
- 未成年者の戸籍本、未成年者の住民票又は戸籍附票
- 未成年後見人候補者の戶籍膽本
- 未成年者に対して親権を行うものがないこと等を証する
- 書面(親権者の死亡の記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)の本や行方不明の事実を証する書類等)
- 未成年者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等)
- 利害関係人からの申立ての場合、利書関係を証する資料
- 親族からの申立ての場合、戸籍時本等
- 後見人候補者が法人の場合は、当該法人の商業登記簿謄本
- 未成年者1人につき収入印紙800円、郵便切手
遺言による場合
- 公正証書這言(謄本)
- 自筆道言の場合には、検認済みの遺言書(謄本)
- 戸籍謄本
関連法令等
民838①・ 839・857・ 859・867、児福47①
家庭裁判所に申し立てる場合 | 遺言による場合 | |
---|---|---|
申立先 | 未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所 | 未成年者の本籍地又は後見人となる |
提出書類 | 未成年後見人選任申立書 | 未成年者の後見届 |
添付書類 | ・未成年者の戸籍本、未成年者の住民票又は戸籍附票 ・未成年後見人候補者の戶籍膽本 ・未成年者に対して親権を行うものがないこと等を証する書面(親権者の死亡の記載された戸籍(除籍、改製原戸籍)の本や行方不明の事実を証する書類等) 未成年者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し、残高証明書等)等) ・利害関係人からの申立ての場合、利書関係を証する資料 ・親族からの申立ての場合、戸籍時本等 ・後見人候補者が法人の場合は、当該法人の商業登記簿謄本 ・未成年者1人につき収入印紙800円、郵便切手 | ・公正証書這言(謄本) ・自筆道言の場合には、検認済みの遺言書(謄本) ・戸籍謄本 |
関連法令 | 民838①・ 839・857・ 859・867、児福47① |
まとめ
未成年の子どもたちを持つ親にとって、未来の不安や心配事は尽きません。しかし、親権者が亡くなった場合でも、未成年後見人を選任することで子どもたちの福祉を守り、適切なサポートを提供できることを知っていただけたでしょう。子どもたちの成長と幸せを願いながら、適切な法的手続きを進めることが大切です。
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